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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
諸戸の母親や男の召使などが、それとなく、絶えず私達の行動を見張っていたので、自由に家の中を歩き廻ることも出来なんだが、私はある時、廊下を間違った体に装って、ソッと奥の方へ踏み込んで行き、開かずの部屋のあることを確めることが出来た。ある部屋では、気味の悪い唸り声が聞えた。ある部屋では、何かが絶えずゴトゴト動いている気配がした。それらは凡て、動物の様に檻禁された人間共の立てる物音としか考えられなんだ。
薄暗い廊下に彳んで、じっと聞き耳を立てていると、云い知れぬ鬼気に襲われた。諸戸はこの屋敷には片輪者がウジャウジャしていると云ったが、開かずの部屋には、土蔵の中の怪物(アア、その怪物に私は心を奪われているのだ)にもました、恐ろしい片輪共が檻禁されているのではなかろうか。諸戸屋敷は片輪屋敷であったのか。だが、丈五郎氏は、何ぜなれば、その様に片輪者ばかり集めているのであろう。
平穏であった三日間には、秀ちゃんの顔を見たり、開かずの部屋を発見した外、もう一つ変った事があった。ある日私は諸戸が父親の所へ行った切り、いつまでも帰らぬ退屈さに、少し遠出をして、海岸の船着場まで散歩したことがあった。