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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

諸戸の不思議な熱情は、私には到底理解出来なかった。寧ろ怖い様にさえ思われた。

それから五日の間、私達はこの不自由な逢瀬を続けた。(逢瀬とは変な言葉だが、その間の諸戸の態度は、何となくこの言葉にふさわしかった)その五日間の私の心持なり行動なりを詳しく思出せば、随分書くこともあるけれど、全体のお話には大して関係のないことだから、凡て略すことにして、要点丈けを摘んで見ると、

あの謎の様な出来事を発見したのは、三日目の早朝、諸戸と紙つぶての文通をする為に、私が何気なく土蔵に近づいた時であった。

まだ朝日の昇らぬ前で、薄暗くもあったし、それに島全体を朝もやが覆っていて、遠目が利かなんだせいもあるが、何よりもそれが余り意外な場所であった為に、私は例の塀外の岩の五六間手前まで、まるで気附かないでいたが、ふと見ると、土蔵の屋根の上に、黒い人影がモゴモゴと蠢いているではないか。

ハッとして、矢庭にあと戻りをして、土塀の角になった所へ身を隠して、よく見ると、屋根の上の人物というのは、外ならぬ傴僂の丈五郎であることが分った。顔を見ずとも、身体全体の輪廓で忽ちそれと分るのだ。