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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

私はそれを見ると、諸戸道雄の身の上を気遣わないではいられなかった。この片輪の怪物が姿を見せる所、必ず兇事が伴った。初代が殺される前に怪老人を見た。友之助が殺された晩には、私がその醜い後姿を目撃した。そしてつい此間は、彼が断崖の上で鶴嘴を揮うと見るや、徳さん親子が魔の淵の藻屑と消えたではないか。

だが、まさか息子を殺すことはあるまい。殺し得ないからこそ、土蔵に幽閉する様な手ぬるい手段をとったのではないか。

いやいや、そうではない、道雄の方でさえ親に敵対しようとしているのだ。それをあの怪物が我子の命を奪う位、何躊躇するものか。道雄があくまで敵対すると見極めがついたものだから、愈々彼をなきものにしようと企らんでいるに相違ない。

私が塀の蔭に身を隠して、やきもきとそんなことを考えている間に、怪物丈五郎は、少しずつ薄らいで行く朝もやの中に段々その醜怪な姿をハッキリさせながら、屋根の棟の一方の端に跨って、頻りと何かやっていた。

アア、分った。彼奴鬼瓦をはずそうとしているのだ。

そこには、土蔵の大きさにふさわしい、立派な鬼瓦が、屋根の両端に、いかめしく据えてあった。