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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
私はその暗号文を思出して見た。
神と仏がおうたなら
巽の鬼をうちやぶり
弥陀の利益をさぐるべし
六道の辻に迷うなよ
この「神」とは烏帽子岩の鳥居を指し「仏」とは例の石地蔵を意味するのではあるまいか。それから、アア、段々分って来たぞ。この「鬼」というのは、今朝丈五郎が取りはずして行った土蔵の屋根の鬼瓦に一致するのではないかしら。そうだ。あの鬼瓦は土蔵の東南の端にのせてあった。東南は巽の方角に当るのではないか。あの鬼瓦こそ「巽の鬼」だ。
呪文には、「巽の鬼を打破り」とある。ではあの鬼瓦の内部に財宝が隠してあったのかしら。若しそうだとすれば、丈五郎はもうとっくに、あの鬼瓦を打割って、中の財宝を取出してしまったのではあるまいか。
だが、諸戸がそこへ気のつかぬ筈はない。丈五郎が鬼瓦を持去ったことは、私がちゃんと通信したのだし、その通信を読んで、彼は初めて何事かに気附いたらしいのだから、この呪文にはもっと別の意味があるに相違ない。鬼瓦を割る丈けならば、第一の文句は不必要になってしまうのだから。
それにしても「神と仏と会う」というのは一体全体何の事だろう。仮令その「神」