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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

「あんまりお話みたいですね」

「いや、そうじゃない。こんな岩で出来た島には、よくそんな洞穴があるものだよ。現に魔の淵の洞穴だってそうだが、地中の石灰岩の層を、雨水が浸蝕して、とんでもない地下の通路が出来て、この井戸の底は、その地下道への入口になっているんじゃないかしら」

「その自然の迷路を、宝の隠し場所に利用したという訳ですね。若しそうだとすれば、実際念に念を入れたやり方ですね」

「それ程にして隠したとすれば、宝というのは、非常に貴重なものに相違ないね。だが、それにしても、僕はあの呪文にたった一つ分らない点があるのだが」

「そうですか。僕は、今のあなたの説明で全体が分った様に思うのだけれど」

「ほんの一寸したことだがね。ホラ、巽の鬼を打破りとあっただろう。この『打破り』なんだ。地面を掘って探すのだったら、打破ることになるけれど、井戸から這入るのでは、何も打破りやしないんだからね。それが変なんだよ。あの呪文は一寸見ると幼稚の様で、その実仲々よく考えてあるからね。あの作者が不必要な文句などを書く筈がない。打破る必要のない所へ、『打破り』なんて書く筈がない」

私達は薄暗い木の下で、暫くそんなことを話し合っていたが、考えていても仕様がないから、兎も角、井戸の中へ這入って、横穴があるかどうかを検べて見ようということになり、