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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
諸戸は私を残して置いて、邸に取って返し、丈夫な長い縄を探し出して来た。漁具に使われていたものである。
「僕が這入って見ましょう」
私は、諸戸より身体が小さくて軽いので、横穴を見届ける仕事を引受けた。
諸戸は縄の端で私の身体を厳重にしばり、縄の中程を井桁の石に一捲きして、その端を両手で握った。私が降りるに従って、縄をのばして行く訳である。
私は諸戸が持って来てくれたマッチを懐中すると、しっかりと縄を掴んで、井戸端へ足をかけて、少しずつ真暗な地底へと下って行った。
井戸の中は、ずっと下まで、でこぼこの石畳になっていたが、それに一面苔が生えていて、足をかけると、ズルズルと辷った。
一間程下った時、私はマッチを擦って、下の方を覗いて見たが、マッチの光位では深い底の様子は分らなかった。燃え糟を捨てると、一丈余り下の方で、光が消えた。多少水が残っているのだ。
更らに四五尺下ると、私は又マッチを擦った。そして、底を覗こうとした途端、妙な風が起ってマッチが消えた。変だなと思って、もう一度マッチを擦ると、それが吹き消されぬ先に、私は風の吹き込む箇所を発見した。横穴があったのだ。