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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
「怪我しなかった?」
「大丈夫です」
諸戸は蝋燭に火を点じて、又歩き出した。私も彼のあとに続いた。
だが、一二間進んだ時、私はふと立止ってしまった。右手に何も持っていないことに気づいたからだ。
「道雄さん、一寸蝋燭を貸して下さい」
私は胸がドキドキして来るのを、じっと堪えて、諸戸を呼んだ。
「どうしたの」
諸戸が、不審そうに、蝋燭をさしつけたので、私はいきなりそれを取って、地面を照らしながら、あちこちと歩き廻った。そして、
「何でもないんですよ。何でもないんですよ」
と云い続けた。
だがいくら探しても、薄暗い蝋燭の光では、細い麻縄を発見することが出来なかった。
私は広い洞窟を、未練らしくどこまでも、探して行った。
諸戸は気がついたのか、いきなり走り寄って、私の腕を掴むと、ただならぬ調子で叫んだ。
「縄を見失ったの?」
「エエ」
私はみじめな声で答えた。
「大変だ。あれをなくしたら、僕達はひょっとすると、一生涯この地の底で、どうどうめぐりをしなければならないかも知れぬよ」
私達は段々慌て出しながら、一生懸命探し廻った。
地面の段になっている所で転んだのだから、そこを探せばよいというので、蝋燭で地面を見て歩くのだが、段々になった箇所は、方々にあるし、その洞窟に口を開いている狭い横穴も一つや二つではないので、つい、どれが今