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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

「万歳」と叫び相にさえなった。私は喜びの余り、掴んだ縄をグングンと手元へたぐり寄せた。そして、それが何時まででもズルズルと伸びて来るのを、怪しむ暇もなかった。

「変だね。手答えがないの?」

側で見ていた諸戸が、ふと気附いて云った。云われて見ると変である。私はそれがどの様な不幸を意味するかも知らないで、勢いこめて、引き試みた。すると、縄は蛇の様に波うって、私を目がけて飛びかかり、私ははずみを食って、尻餅をついてしまった。

「引っぱっちゃいけない」

私が尻餅をついたのと、諸戸が叫んだのと同時だった。

「縄が切れているんだ。引張っちゃいけない。そのままソッとして置いて、縄を目印にして入口の方へ出て見るんだ。中途で切れたんでなければ、入口の近くまで行けるだろう」

諸戸の意見に従って、蝋燭を地につけ、横わっている縄を見ながら、元の道を引かえした。だが、アア、何という事だ。二つ目の広間の入口の所で、私達の道しるべは、プッツリと断ち切れていた。

諸戸はその麻縄の端を拾って、火に近づけて暫く見ていたが、それを私の方へ差出して、

「この切口を見給え」

と云った。私が彼の意味を悟り兼ねて、もじもじしていると、彼はそれを説明した。