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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
「君は、さっき君が転んだ時、縄を強く引張った為に、中途で切れたと思っているだろう。そして、僕に済まなく思っているだろう。安心し給え、そうではないのだ。だが、我々にとっては、もっと恐ろしいことなんだ。見給え。この切口は決して岩角で擦り切れたものじゃない。鋭利な刃物で切断した跡だ。第一、引張った勢いで擦り切れたものなら、我々から一番近い岩角の所で切れている筈だ。ところが、これは殆ど入口の辺で切断されたものらしい」
切口を検べて見ると、成程、諸戸の云う通りであった。更らに私達は、入口の所で、つまり私達がこの地底に這入る時、井戸の中の石畳に結びつけて来た、その近くで切断されたものであるかどうかを確める為に、縄を元の様な玉に巻き直して見た。すると、丁度元々通りの大きさになったではないか。最早や疑う所はなかった。何者かが、入口の近くで、この縄を切断したのである。
最初私がたぐり寄せた部分がどれ程あったか、ハッキリしないけれど、恐らく八間位であっただろう。だが、私達が転ぶ以前に切断されたものとすると、私達は端の止っていない縄を、ズルズルと引ずって歩いていたかも知れないのだから、現在の位置から入口まで、どれ程の距離があるか、殆ど想像がつかなんだ。