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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
私はもう殆ど絶望していた。
「でも、そのどうどうめぐりを防ぐ手段があるのだよ。僕はこういうことを考えて見たんだ。長い糸で一つの輪を作る。それを板の上に置いて、指で沢山のくびれを拵えるのだ。つまり糸の輪を紅葉の葉みたいに、もっと複雑に入組んだ形にするのだ。この洞穴が丁度それと同じことじゃないか。謂わばこの洞穴の両側の壁が、糸に当る訳だ。そこで、若しこの洞穴が糸みたいに自由になるものだったら、凡ての枝道の両側の壁を引きのばすと、一つの大きな円形になる。ね、そうだろう。でこぼこになった糸を元の輪に返すのと同じことだ。
で若し、僕等が、例えば右の手で右の壁に触りながら、どこまでも歩いて行くとしたら、右側を伝って行って行止まれば、左側を、やっぱり右手で触って、一つ道を二度歩く様にして、どこまでもどこまでも伝って行けば、壁が大きな円周を作っている以上は、必ず出口に達する訳だ。糸の例で考えると、それがハッキリ分る。で、枝道の凡ての延長が二里あるものなら、その倍の四里歩きさえすれば、ひとりでに元の出口に達する。迂遠な様だが、この外に方法はないのだよ」
殆ど絶望に陥っていた私は、この妙案を聞かされて、思わず上体をしゃんとして、いそいそと云った。