轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
私達の坐っていた部分は、その洞窟の中で一番高い段の上であったから、つい気附かないでいたけれど、見ると、水はもう一二間の所まで迫って来ていた。
私達は段を降りると、ジャブジャブと水の中を歩いて、大急ぎで元来た方へ引返そうとしたけれど、アア已に時機を失していた。諸戸の沈着が却って禍を為したのだ。水は進むに従って深く、もと来た穴は、已に水中に埋没してしまっていた。
「別の穴を探そう」私達は、訳の分らぬことを、わめきながら、洞窟の周囲を駈け廻って、別の出口を探したが、不思議にも、水上に現われた部分には、一つの穴もなかった。私達は不幸なことには、偶然寒暖計の水銀溜の様な、袋小路へ入り込んでいたのだ。想像するに、海水は、我々の通って来た穴の向う側から曲折して流れ込んで来たものであろう。その水の増す勢が非常に早いことが、私達を不安にした。潮の満ちるに従って這入って来る水なら、こんなに早く増す筈がない。これはこの洞窟が海面下にある証拠だ。引潮の時僅かに海上に現われている様な、岩の裂目から、満潮になるや否や、一度にドッと流れ込む水だ。
そんなことを考えている間に、水は、いつか私達の避難していた段のすぐ下まで押し寄せていた。