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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
丈五郎は成人するまでの、数々の悩み苦しみ、人間共の迫害について、長い物語を聞かせてくれた。母親は彼に呪いの言葉を残して死んで行った。成人すると、彼はどうしたきっかけでか、この岩屋島へ渡ったが、丁度その頃樋口家の世継ぎ、つまり丈五郎の異母兄に当る人が、美しい妻と生れた許りの女の子を残して死んでしまった。丈五郎はそこへ乗込んで行って、とうとう居坐ってしまったのだ。
丈五郎は因果なことに、この兄の妻に恋をした。後見役といった立場に在るのを幸い、手を尽してその婦人を口説いたが、婦人は『片輪者の意に従うなら、死んだ方がましだ』という、無情な一言を残して、子供をつれ、ひそかに島を逃げ出してしまった。丈五郎は真青になって、歯を食いしばって、ブルブル震えながら、その話をした。それまでとても片輪のひがみから、常人を呪っていた彼は、その時から、本当に世を呪う鬼と変ってしまった。
彼は方々探し廻って、自分以上にひどい片輪娘を見つけ出し、それと結婚した。全人類に対する復讐の第一歩を踏んだのだ。その上、片輪者と見れば、家に連れ戻って、養うことを始めた。若し子供が出来るなら、当り前の人間でなくて、ひどいひどい片輪者が生れます様と、祈りさえした。