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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

だが、何という運命のいたずらであろう。片輪の両親の間に生れたのは僕だった。似もつかぬ、極く当り前の人間だった。両親はそれが通常の人間であるという丈けで、我子をさえも憎んだ。

僕が成長するにつれて、彼等の人間憎悪は益々深まって行った。そして、遂に身の毛もよだつ陰謀を企らむ様になったのだ。彼等は手を廻して、遠方の生れたばかりの貧乏人の子を買って歩いた。その赤坊が美しくて可愛い程、彼等は歯をむき出して喜んだ。

蓑浦君、この死の暗闇の中だから、打開けるのだけれど、彼等は不具者製造を、思い立ったのだよ。

君は支那の虞初新志という本を読んだことがあるかい。あの中に見世物に売る為に赤坊を箱詰めにして不具者を作る話が書いてある。又、僕はユーゴーの小説に、昔仏蘭西の医者が同じ様な商売をしていた様に書いてあるのを読んだ覚えがある。不具者製造というのは、どこの国にもあったことかも知れない。

丈五郎は無論そんなことを知りゃしない。人間の考え出すことを、あいつも考え出したに過ぎない。だが、丈五郎のは金儲けが主眼ではなく、正常人類への復讐なんだから、そんな商売人の何層倍も執拗で深刻な筈だ。