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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
過去のことはそれ丈けにして、さて最後に、登場人物の其後を、ごく簡単に書き添えて、この物語を終ることにしよう。
先ず第一に記すべきは、私の恋人秀ちゃんのことである。彼女は初代の実妹の緑に相違なく、樋口家の唯一の正統であることが分ったので、地底の財宝は悉く彼女の所有に帰した。時価に見積って、百万円に近い財産である。
秀ちゃんは百万長者だ。しかも、現在ではもう醜い癒合双体ではない。野蛮人の吉ちゃんは、道雄のメスで切離されてしまった。元々本当の癒合双体ではなかったのだから、無論両人とも何の故障もない一人前の男女である。秀ちゃんの傷口が癒えて、ちゃんと髪を結い、お化粧をし、美しい縮緬の着物を着た彼女が、私の前に現われた時、そして、私に東京弁で話しかけた時、私の喜びがどれ程であったか、ここに管々しく述べるまでもなかろう。
云うまでもなく、私と秀ちゃんとは結婚した。百万円は、今では、私と秀ちゃんの共有財産である。
私達は相談をして、湘南片瀬の海岸に立派な不具者の家を建てた。樋口一家に丈五郎の様な悪魔が生れた罪亡ぼしの意味で、そこには自活力のない不具者を広く収容して、楽しい余生を送らせる積りだ。