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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

「おかしな男だね。いやにソワソワしている。何か話したの?」

「イイエ、何だか解らないんです」

「妙だな。今木崎の家の人に聞くとね。あの諸戸君は初代さんが死んでから、三度目なんだって、訪ねて来るのが。そして妙に色々なことを尋ねたり、家の中を見て廻ったりするんだって。何かあるね。だが、かしこ相な美しい男だね」

深山木はそう云って、意味ありげに私を見た。私はその際ではあったけれど、でも顔を赤くしないではいられなかった。

「早かったですね。何か見つかりましたか」

私はてれ隠しに質問した。

「色々」彼は声を低めて真面目な顔になった。彼の鎌倉を出る時からの興奮は、増しこそすれ決してさめていない様に見えた。彼は何かしら、私の知らない色々なことを、心の奥底に隠していて独りでそれを吟味しているらしかった。「俺は久しぶりで、大物にぶつかった様な気がする。だが、俺一人の力では、少し手強いかも知れぬよ。兎に角、俺は今日からこの事件にかかり切るつもりだ」

彼はステッキの先で、しめった土間にいたずら書をしながら、独言の様に続けた。

「大体の筋道は想像がついているんだが、どうにも判断の出来ない点が一つある。