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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
に迷った形で、探偵をやるのだといいながら、一向探偵らしいこともせず、深山木幸吉のいやな癖の思わせぶりに、いい気になって引ずられている様子を見て、きっとじれったく思っていらっしゃることでしょう。私とても、こんな風にありのままに記して行くのは、自分の愚かさを吹聴する様なもので実は余り気が進まぬのだけれど、当時、私は実際お坊ちゃんであったのだから、どうも致方がない。読者を歯痒ゆがらせる点については、事実談ならこうもあろうかと、大目に見て貰う外はないのである。
さて、前章に引続いて、私は深山木幸吉の気の毒な変死の顛末を書綴らなければならぬ。
深山木はその時猿股一つで、砂浜の上を海水着の子供等と、キャッキャと云って走り廻っていた。彼が子供好きで、腕白共の我鬼大将になって、無邪気に遊ぶのを好んだことは、已に屡々述べた所であるが、その時の彼の馬鹿なはしゃぎ方には、子供好きという様なことの外に、もっと深い原因があった。彼は怖がっていたのだ。例の下手な字の脅迫状の「正午限り」という文句におびえていたのだ。四十男の非常に聡明な彼が、あの様な子供だましの脅迫状を真に受けるというのは、何か滑稽な感じがしたけれど、彼にしてはあんなものでも、真面目に怖がるだけの充分の理由があったことに相違ない。