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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
顔が段々白くなって行く様だし、大きく見開いた目が、さっきから長い間瞬きをしないのだ。それに、彼の胸の辺の砂の上に、どす黒い斑紋が浮出して、それがジリジリと、少しずつ拡がっている様に見えるではないか。子供等もただならぬ気配を感じたのか、妙な顔をして黙り込んでしまった。
私はいきなり深山木の首に飛びついて、両手でそれを揺り動かして見たが、まるで人形の首みたいに、グラグラするばかりだった。急いで、胸の斑紋の所を掻き分けて見ると、厚い砂の下から、小型の短刀の白鞘が現われて来た。その辺の砂が血のりでドロドロになっていたが、なお掻きのけると、短刀は丁度心臓の部分に、根元までグサリと突きささっていた。
それからの騒動は、極り切っていることだから、細叙を省くけれど、何しろ日曜日の海水浴場での出来事だったから、深山木の変死は、誠にはれがましいことであった。私は何百という若い男女の、好奇の目を浴びながら、蓆をかぶせた死体のそばで、警官と問答したり、検事の一行が来て、現場の検証が済むと、死体を深山木の家へ運ぶのに附添ったり、ひどく恥しい思いをしなければならなかった。だが、そんな際にも拘らず、私は、その群衆の折り重なった顔の間に、ふと諸戸道雄の、やや青ざめた顔を発見して、何かしら強い印象を受けた。