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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
どんな悪魔だってこれじゃ近寄れないね。ウフフ」
彼はやや元気を恢復している様に見えた。
私はその辺を行ったり来たりしながら、さっきチラッと見た諸戸のことが気になるので、広い砂浜を、あちらこちらと、物色したが、どこへ行ったのか、彼の姿はもう見えなんだ。それから、私は深山木の所から二三間離れた場所に立止って、暫くの間ボンヤリと、飛込台の青年達の妙技を眺めていたが、少したって、深山木の方を振向くと、彼は子供等のたんせいでもうすっかり埋められていた。砂の中から首だけ出して、目をむいて空を睨んでいる様子は、話に聞く印度の苦行者を思出させた。
「おじさん、起きてごらんよ。重いかい」
「おじさん、滑稽な顔をしてらあ。起きられないのかい。助けて上げようか」
子供等はしきりと深山木をからかっていた。だが、いくら「おじさん」「おじさん」と連呼しても、彼は意地悪く空を睨んだままそれに応じようともしなかった。ふと時計を見るともう十二時を二分ばかり過ぎていた。
「深山木さん。十二時過ぎましたよ。とうとう悪魔は来なかったですね。深山木さん、深山……」
ハッとして、よく見ると、深山木の様子が変だった。