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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
この明石病院の院長は、山の井医学士の親友でがす。
もっとも他の新聞にも出ましたから、事件は、さして秘密じゃありますまいが、自分がお夏さんの世話をしておいでだった光起(山の井医学士の名)さん。
薄々青柳町に囲ってある、妾だ妾だという風説なきにしもあらずだったもんですから、多くは知らんにもせい、」と声をひそめる。
「どうして、私はまた、不意に貴老が見えたのを、神の引合わせかと思う。ちょっと筋向うのが柳屋のだと、声をさえかけて下すったら、素通りにされても怨まない。実際そうでないと、わずか廊下を七八間離れたばかりで、一篇悲劇の女主人公、ことに光栄ある関係者の一人で居ながら、何にも知らないで退院する処でした。あとで聞いては千載の遺憾だったに、少くともその呼吸のある内に、時鳥と知って声を聞いたのは、光栄です。私はこれを一声の時鳥だといいます。あの血を吐く声が実に腸を断つようで。竹永さん、」
と面を上げて、金之助は今もその音や聞ゆる、と背後を憂慮うもののごとく、不安の色を湛えつつ、
「引続きこの快晴、朝の霜が颯と消えても、滴って地を汚さずという時節。夜が明けるとこの芝浜界隈を、朗かな声で鰹――