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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ところが去年、彼の留守のまに、武大は思いがけない女房をもらう破目になった。それがしかもたいへんな美人だった。たとえば、羽衣を地におき忘れた天女がやむなく下界の下種の女房になったかと思われるような……潘金蓮という女。
もちろん、それにはわけがある。
元々、この金蓮という小娘は、姓を潘といい、清河県の大金持ちの家へ買われた女奴隷だったが、やがてその美が熟してくると、主人の狒々長者は、のべついやらしいことを言い寄りはじめた。女奴隷は財物なので、狒々長者の欲情視は特にふしぎなことではない。
だが、金蓮の花芯はまだそこまで開意をもっていなかった。いやがったり、泣いて逃げたり、あげくに長者の本妻へ告げてしまった。
長者は嫉妬ぶかい本妻にいためつけられ、家人子供らには笑われるしで、赤恥をかいた。ために可愛さ余ッての憎さも百倍、金蓮の身は奴隷仲買人の手にもやらず、彼女の持ち物だけを嫁入り支度として、これを町じゅうで小馬鹿にしている醜男で生活力もない評判の武大へ女房にくれてしまったのである。つまり「――一生、憂き目を見さらせ」という意趣返しだ。
ところで、武大はお人好し。