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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

それは古いわれわれの祖先の略奪結婚の変態した信仰形跡の名ごりであるかいなか、または真実に河淵湖沼の主や深山幽谷の山男の族というような他生の魔物が存在しているかどうかは、そのほうの、考証学の諸先輩にお任せするのが適当な礼儀でもあり、また便利でもある。

ここでは単に以上のような民譚も、この山島民族の伝承のうちにあるということだけを、一言説陳しておくまでである。

付記。この伝承は前にはああいっておいたが、やはり三輪式伝説や、あるいは人間対蛇獣婚姻の関係伝説とその系統を同じうしているものであるかもしれない。しかしてこういう説話をわれわれの祖先のあるいは祖先と他民族との間に起こった奪略結婚の遺風余話の名ごりその他とみるもよろしい。けれども science といえばぜひ、むりやりにもなんとか結論をつけなければならぬという考えも、ある中毒堕套のことであろう。西洋ではどうかは知らぬが、日本での考証穿鑿の御難事は某々博士たちのお仕事におまかせしようか。そしてわれわれはいまのところ、ここしばらくの間ごくすなおに見せ、授けられたる仕事の形態とそれを信ずる民間の心とを尊重しておきましょうか。