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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
千把萱の話
一
この女神かどうかわからぬが、この山にも美しい女人の山神さんが、磐司という狩人のために赤子を産んで、この男を神技に近い狩りの名人とし、非常な山幸をえさせたという主題の話もあります(「磐司磐三郎の話」参照)。
私は右のような、赤子抱きの話が、諸国ほうぼうにまだまだ多くあることと思い、こういう話をみなさんにも多分に思い出していただき、そうして私たち祖先の経きたった複雑な心の生活のいろいろさまざまな色合いをもろともに考えてみたいと思います。
千把萱の話
一
陸前国気仙郡矢作村というに、昔、意地悪い継母があった。どうしても継子を殺したいと思って、自分の産んだ子と二人を連れて、町へゆくとて家を出て、途中けわしい岩山によじ登り、二人の娘にこの断崖の上からころげ落ちよといって、千把のカヤを刈って、自分の娘をばそのカヤのなかにすっかりと包んで束ね、継娘をばそのままで岩頭から二人をいっしょに突き落とすと、継子のほうは運よく途中の木の根に衣物の裾が引っ懸かって助かり、実子のほうはカヤ把の重さで下の谷川の大石の上にころび落ちて、からだが千々に砕けて死んでしまった。それを見た継母は、はじめて自分の邪慳を悟り、同じくその崖から身を投げて死んだという。