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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

二

……と著者はいってからまたさらにあれと同型同様の伝説はこのほかに、刈田郡、槻郡(3)といえる地方にもありと付記している。

松井という人は昔の人だから、この近江のクリの木の伝説はなんという本にあることかその出所を明らかにせなかったが、けだしこれは有名な話であろう。奥州の山村には大図書館がないので古典に拠ることが能わぬからこの話の穿鑿はこのまま放っておき、そのかわりに同種同式の新しい話を左におみやげにする。

(1)岩手県稗貫郡矢沢村字高松、いまその跡に一祠堂あり。

(2)この京都の画家、奥州花巻城の松の間、葉の間の絵を書きしをもって有名なる人。

(3)宮城県の磐城国の苅田郡ならん、槻郡というはいまその類書もたぬから自分にはわからず。

二

岩手県上閉伊郡栗橋村字古里という所に一のマツの木あり、年々枝葉繁伸してついに付近の耕地を蔽い日光をさえぎることおびただしかった。その大きさははるかに笛吹峠からも和山峠からも見えるほどであった。その木の持主の某は惜しい樹木だが耕作物の邪魔には見替えられぬとて、伐り始めたがその日は木の十分の一をも伐ること能わずに夜になって家に帰った。