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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

二

田舎の胴築きの方法は東京辺の、ようえいとこらさのさとはわけが違う。千曳きの綱を結び付ける石をば亀の子石と呼んでいる。この石はきわめて神聖なもので用いる場合には日に幾度か御酒を石に注ぎかけてやる。そうせぬと石がけっして動かなくなるものだと信じるからである。またまったく石もそのとおりであるらしい。普請がすめばこの石は村の入口か境かあるいは神社の境内か一定の元あった場所に持ち運ばれる。なにかの理由でもしこのさいその石が不機嫌なときには途中で止まって、こんりんざい動かぬようになる。そんなときに必要なのはいつもの巫女の力である。

二

自分はもう一つの資料をあげてこの話を打切りにしようと思う。陸中国閉伊郡船越村字田ノ浜の鎮守に荒神神社というのがある。この神社は荒神崎という崎頭にあって、その境内に御本尊さまと呼ばれている子ウシがつくばったくらいの大きさのやや黒色の円石がある。元この石はこの出崎の山裏の黄金浜という渚にあったが、あるとき田ノ浜の女娘どもソエ(磯草採り)にゆき、そのうちの一人の娘がなにげなくこの石に腰を掛けて休んだ。ところがからだが石に密着してついに離れなくなってしまった。