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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
ふしぎな縁女の話
一
街頭に佇てばあまりに騒がしい。
あすの日もないように、なにをあせり
なにを騒ぐのでしょう。おいでなさい。
その騒々しさからそっとのがれて
心おきなく語ろうではありませんか。
語る人の目はほがらかです
聞く人の心はなごやかです。
胸と心はおのずからとけて
春も、夏も、秋も、冬も、
静かに流れてゆくでしょう。
ふしぎな縁女の話
一
生まれながらにして、人間以外のものに、すなわち妖怪変化のものの処に縁づくべき約束のもとにあり、その娘が齢ごろになると種々な形式でもってそこに嫁いでゆくというような口碑伝説がいくらもある。
岩手県上閉伊郡釜石町、板沢某という家の娘に見目よきものがあった。この娘ある日クワの葉を摘むとて裏の山へいったまま、クワの木の下に草履を脱ぎ棄ておいてそのまま行くえ不明になった。家人は驚いて騒ぎ悲しんでいるとそこに一人の旅の行者が来かかりその訳を聞き、いわく、今は嘆くともせんかたないだろう。じつはこの娘は生まれながら水性の主の処へ嫁ぎゆくべき縁女と生まれ合わせていたので、いまはちょうどその時期がきて、これから北方三十里ばかり隔たった閉伊川の岸腹帯という所の淵の主のもとにいったのだ。