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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
二
そのよき例は、奥羽の鉱山地方に広く流布されている黄金牛口碑でありまして、すなわち私はそのことをこれからぽつぽついおうと思うのであります。奥州の黄金の歴史はかなり古いものであるようでありますが、どうしてそれがいささかも似てもつかぬウシとこうやすやすとむすびついたかは真にふしぎな話であります。田舎者の学究には文献に徴すべきいっさいの縁が絶たれております。考えてもらちの明かぬことは世間の長者に問うたほうが学問のためにも礼儀であり、また事の近道でもあります。私はそういう考えからこの小さな報告書を書いてみたいと心がけておったのであります。
二
黄金のウシの話は、いずれも墜坑口碑に関係っております。すなわち鉱山師がウシの形態をして親金に掘り当てたが、それを坑中から外へ取り出そうとするとふいに坑が落ちて、七十五人の鉱夫、あるいは千人百人の鉱夫らが惨死したと言い、そのとき、ふしぎな理由でたった一人の人間(それは男もあり女もありますが)のみが助かったというのがこの口碑の構図であります。つぎにそれらの二、三の例を挙げつつ話を進めてゆきましょう。
陸中国遠野郷(いまの上閉伊郡)小友村に、長者がありまして、その家に一人の下男がおりました。