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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

二

嫁はその夜家に帰ってからひどく気を悪くし、あんな盲目老婆でさえカヤ小舎に入れて火をつければあんなにりっぱに出世する。われもはやく別の奥山に連れていってああやってくれと夫を急きたてて夫婦で別の奥山をさしていきます。そしてこんどは二人で大汗になってカヤ千把刈り、それで大急ぎで小舎がけをして、嫁は自分からそのなかに這いこみ、外から夫に火をつけらせたが、どうも嫁の場合には小鬼どもがきて小槌をもくれず、したがって女殿さまにもなれずにとうとうそのまま焼け死んでしまったという、昔話であります。

二

前話と似て非なる昔話をもう一つしよう。発端は前話と同様であって、老母は齢とって仕事ができずいつも寝ていてシラミをとって噛みつぶしているのを、嫁はあれは米を盗んでああいつも食っているのだと思います。夜になって寝ていながら嫁は、婆さんにああいうふうにしじゅう米を噛まれては正月がきてもわれが米の飯を食うことがならぬ。あの人を家においてはためにならぬからいっそのこと奥山に連れていって捨てるにかぎると夫に気をたてさせる。もし嫁のいうことをきかぬと実家に帰るといわれる気遣いがあるので、夫もいよいよしかたなく老母を背負い出して奥山に捨てにいこうと思いました。