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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

二

大八は翌朝、太平山頂の御堂を立ち出で、一歩を地に踏み出すと、授かった力量の重さで踵までが土にめりこんだと言います。それからは天下無双の大力士となり、江戸に出て横車大八とうたわれたと申すことです。なんでも詳しいこの人の実録というものがあるそうですが、私はただその赤子抱きによって稀代な力量をえたというその話だけをここにちょっといっただけであります。

二

もう一、二、この話と同型の話を述べますと、同国北秋田郡ボウザワという土地に徳という大力者がありました。この男、身の丈七尺五寸、顔の長さ馬面と同じく、アギタ(頤)の長さ八寸あったと言います。やっぱり家貧しく、山子で、山に角材削りにいっていて、オボの神さんから前話同様の赤子抱きをさせられて、大力を授かったということです。

オボの神というは産神、すなわち山神でまことに美しい女人であったことなども、すべて前話同様でありましたのです。

この男、十九のとき、主人に納める小作米を四俵ウマにつけ、村端れの山峡の細道にさしかかると、ふいに向こうから殿さまの行列がやってきました。徳は山峡のことゆえに、ちっとも気がつかずにウマを引いて参ったのでしたから、まったくふいをくらってしまい、どうすることもできませぬ。