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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

三

同郡大槌町大槌川の付近、正内という処に一人の娘があった。この娘は生まれながらに土地の巫子から水性のもののもとへ縁女にとられると予言されておったが、やがて十三歳になったときの夏の日、大槌川にて水浴するとて朋輩の女児とも四、五人ずつとともにつねに川にゆくが、この娘のみ一人連れから離れてある岩のほとりに寄り水中にからだを浸していたが、そうすること四、五日してからついにその水中に沈んで死んだ。死体を見ると陰部に粘液が付着していた。たぶんウナギかなにかの仕わざであろうといったと、これはいまより十年ほど前の話である。

陸前国気仙郡花輪村の竹駒という所に一人の美しい娘があった。あるときこの娘が外で遊んでいるところを一羽のワシにさらわれて同郡有住村の角枯し淵というに落とされた。すると淵のなかより一人の老人が出てきてその娘を背に乗せて家に送り届けた。じつはこの老人はサケであった。そうしてこの老人はしいて娘に結婚を申しこんでついに夫婦になった。その子孫の者はいまでもけっしてサケを食わぬということである。

三

こう列記してくると、かの三輪式口碑その他の蛇族や河童やサル、オオカミに見こまれてさらわれてゆきまたは嫁いでゆく態の事がらとは自然とその根本において異なっている。