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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
偽汽車の話
私の祖父などは百姓の暇々にその大雑書を筆写していたものでした。まさかそんな書物の間に西洋の童話がはさまっていたとも思われませぬ。これにはなにかの取りつぎものがあったことだろうと思います。
偽汽車の話
かなり古い時代から船幽霊のほうがわれわれの間に認められていたらしい。ただしこの偽汽車だけはごく新しい最近にできた話である。ずっと古いころで明治十二、三年から二十年前後のものであろう。それにしては分布の範囲は鉄路の延びるにつれて長く広い。克明に資料を集めてみたなら奥は樺太、蝦夷が島の果てから南は阿里、台南の極みまでも走っているかもしれない。自分は資料を多く集める機会をもっておらぬが、誰でもこの話はどっかで一度は聞いたことがあるだろう。そこで自分のほうの話から始めにして、つぎには諸君から聴きたいと思うのである。
よくは聞いてみぬが奥州の曠原に汽車のかかったのはなんでも明治二十二、三年ごろのことであろう。当時俚人は陸蒸気だといって魂消た。岩手県二戸郡大野村などでは、大野中ほどに陸蒸気出来た、おまえ船頭でわし乗るべ、というような俗謡まで、できたほどである。その大野にもあり、それから四十里ばかりも離れていようか、上って陸中和賀郡の小正月の晩、キツネのお作立てや当年の吉凶予報の野外劇で有名な後藤野にもあり(後藤野は小正月