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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

昔話の収集と研究

一

それはこうである。「どうも……」

昔話の収集と研究

一

一昨年の冬、村の老媼と親しい知合いとなったおかげで、かなり多くの昔話を聴くことができた。私は民間に残っている古譚の収集に心がけてからよほどの歳月をへているけれども、このときくらいの好収穫をえたことはいまだかつてなかった。手帳が二冊三冊とだんだんにふえてゆくのがうれしかった。

私は老媼の家に、一月の下旬から三月の初めまでざっと五十余日の間ほとんど毎日のように熱心に通った。深雪も踏み分け、吹雪の夜もいった。村の人たちには今日も馴染み婆さまの所にゆくかといって笑われた。

ある日などは、早朝から夜の十二時すぎまでもその人と炉傍に向き合っていたことさえあった。なにしろ外はあの大吹雪なので、すこしの隙間からでもぴゅうぴゅうと粉雪が家の内に吹きこんで、見るまに子どもらの悪戯のような細長い白い山脈ができた。雨戸をぴしぴしと締めきっているので、室内が薄暗く、差向いの老媼の顔さえやっとぼんやりと見える程度であった。それに寒いから炉には生木をどんどん焚いた。その火明りが昼間ながら、ちょうど夜更けのような気持をさせた。