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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

三

三

ここまでいうてくると、無形の高等神ならいざ知らず、かかる木像やタケ(10)などまでがそう飛んだのか、またそう飛び歩かなければならなかったか、なおかつ村人がそう信じ、いかにしてそう信じさせられ、信じなければならなかったかという問題に突き当たるが、このほうははなはだ多く飛んだ神のオシラのほうの例をみているうちにすこしの不自然もなく理解がつくと思うから、そんな理窟談はあとでゆっくりさせていただく。ここでは私は単におもしろそうな話を追うてゆくだけのことを能とする。ここで話をずっとはずしてこのたびは神性ではなかろうが、おおかたそれらに近い素質をもっているものの、同じく火事のときに飛んだという話をしよう。陸中国上閉伊郡馬牛村字東禅寺というに、土地の伝説上有名な無尽和尚という人があったといわれている。その人が持った杖が近年まで残ってあったが、寺が焼けるときどこへか飛んでいってしまった。またこの和尚の在世中に、数百人の学徒に飯を焚いて食わせた大釜があったが、やはりそのとき飛び出そうとして大廊下をごろごろ顛倒回り、大きな音をたてて鳴いたが、あまり重量がありすぎたのでこのほうはついに飛べなかったとていまにある。