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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

三

物語の収集のまったく容易でないことがしみじみと思われた。いまそのときえた話のなかから、在来日本の童話の古い原型ではないかと思われるようなものを二つ三つつぎに記してみよう。

三

――サルカニの合戦譚の古い型ではないかと想像される話――

ある山にサルとカニがすんでいた。二人は餅搗きをした。ずるいサルは餅が搗けると臼ごと担いで奥山のほうへ逃げていった。だけれどもあんまり急いだもので、臼から餅が落ちたのも気づかずにいった。カニは口惜しくて、サルどんサルどん、待ちもせ待たれもせえと言いながらあとを追うていった。ところがホオの葉の上に餅がそっくり落ちてあった。一人でそれをしんめりしんめりと食っていた。

サルは家に帰って臼をおろしてみると餅がなかった。これは事欠いたと思って、元きたとおりに引っ返してきてみると、カニがそのありさまだ。あきれたが、カニどんカニどん、木の葉のついた餅はあまりうまくも無申さかべ(ないでしょう)といった。カニは、木の葉吹き払い掻っ払い食えばあまりうまくなくもなえ申すと言い返した。そんだら少々おれにも食わせてみされじゃとサルはいった。そんだは臼の餅を食いめされとカニはいうと、サルは怒って、そんだはおれの餅を食ったといって、カニの頭を打った。