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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

二

のうちでは見なかった別種のこの話をしようと思う。

近ごろ自分が閉伊郡花輪村という所で発見した狩猟の巻物、山神狩人秘法大事という写本にも、磐司磐三郎の発生地を下野国日光山のその麓としてあるけれども、奥羽地方になると陸前名取郡の磐司磐三郎山(2)をはじめ、羽前の山ノ寺縁起(3)など、その他にも諸所に万治、磐治などの住居した所が散在している。かくのごとくこの口碑の分布が諸国にかなり広い範囲にわたっており、かならずしも日光山の麓やその他ばかりが話の根原ではないかもしれぬ。ただしそんな議論めいたことは別として、自分はただちにこの話の本旨に還って、そのおもしろそうなところをぽつぽつ話してみたいと思うのである。

(1)(2)(3)柳田先生の『神を助けた話』の七、磐司磐三郎の一節には諸国諸国のその名の山神あるいは山嶽の記事が充満している。しかしていずれも神かしからざればついには神にまつられた山人のいわれがそれと付随している。しかし私の話ではどこまでも素の山人あるいは狩人としての万治、磐治の話である。そこのところにご注意して読んでいただきたい。

二

陸中国閉伊郡附馬牛村字生出という山里に万治と磐司という二人の狩人があった。