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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
千曳石の話
一
そしてそのまま永久に木とともにその深淵から上がらないそうです(私の収集資料から)。
千曳石の話
一
陸奥の国上北郡、坪村の千曳の石、別名壺の石碑の口碑は古歌などによってもかなり有名な話である。口碑には鬼垣にとてこの石を建てたというふうに言い伝えられている。すなわち境界の石、封じの石、魔除けの標示である。けれどもその千曳という名の起りが、それにしてはいかにもふさわしくなくかつ不審である。東遊雑記には千曳社の神主教岩坊の談なりとて、下条の話を記している。すなわち神代のときに石の札を立て、その石をかぎり北方の国により渡りくる鬼を追い返さんとせしことなるに、悪鬼来たりてその石を土中へ深く隠せしを、神たち集まりて捜し出したまいしところ、今の石文村にてその石の建ちし所坪村にてありしを、坂上田村麿来たりたまい、鬼を残りなく殺したもう。ゆえにこの石をば無用とて、ここに埋めその上に社を建立なされて候。さてその石を坪村よりこれまで引き取るに数千人にて曳きしをもって千曳大明神と申す。歌に、みちのくの千曳の石とわが恋は荷ふはすをりに中やたへせん云々と(加藤咄堂氏『日本風俗志』