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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
黄金のウシの話
一
黄金のウシの話
一
思想というものに、そう大差がなかろうと思うのは大間違いで、昔の人の心持を今日の常識から考えてみていかにも理解のできぬことが雑多にあります。それはどういう事がらかと言いますと、かれらはまったく思いもよらぬ配合や継ぎ合せをやっていることでありますが、しかしまた人の心の一面にはそういう突飛な思想(想像・空想)を喜ぶ傾向も十分に抱持しているのであります。いわゆる奇想天外からきたものほど、素朴なわれわれの祖先が印象をふかくし、かつ正直に請け入れ、むしろ喜び迎えたかに思われますのがふしぎはないことと思われます。いずれの時代にも平凡な常識で判断のつくものだけ神聖性が薄かったはずであります。巫女寄祈の力の偉大であったことはとうてい今日のわれわれからは想像のほかであります。そういうところに根ざしかつ芽生えした口碑伝説が、あらゆる時間と錯誤と矛盾とを超越して真っ直に成長し、その枝葉を広く繁茂さしてきたことにはすこしも不自然がなかったことであります。なぜなれば民間には、多くのそれらの暗示宜語をただちに受容するによいすべての準備が十分にそなわってあったからであります。