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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
二
ある。しかし、ここでとくに私は断わっておくが、この宗派はなにかとこんな些細なことにもやかましいから、どこの御本尊だともいわれない。また私のいまのところでは、飛んだことそれが問題なのだから、他にわたったことにはかかわりたくない。これも民間からの聞書きだから、たしかな年代などはよくわからぬが、こっちも法度にふれて、主脳者らは捕われた。しかしよく検糺してみると邪法とは申せ、浄土真宗とあまりの相違もないので、本尊は取り上げて表派の盛岡北山の本誓寺に移し、智識をばおおいに減刑してそこの寺男とした。だが人情はふしぎなもので、正統の住職よりもこの寺男(3)のほうが民間信徒の崇拝の的となって、ますます帰依者をぞくぞくと出した。この男は本誓寺で亡くなったが、今日でもその墓前には線香の煙が日夜絶えぬというが、ただしこれは余談である。さてそれから、その移された黒仏はどうなったかというに、いまでもりっぱにあって有名であるが、この寺にきてからも、火事のときには、門前のハス池まで飛んで、ハス葉にくるまっていなされた。
二
これからいよいよ話の本すじに取りかかるが、この火事のさいに飛んだ神の本場はじつはかのオシラサマ(4)であって、奥州では磐城岩代から陸奥津軽の果てにいたるまで真に無数の例をわれわれに示している。