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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

しかしここにいおうとするのは、そんな神話や古典などの※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)し絵にあるような神ではなく、現在われわれの間に秘信されている煤ぼけた木像やなにかが飛んだり、または歩いたりした話である。ただ困ることにはこんな類の話が非常に多いのだから、ここにはごくその範囲を狭くして、そんな類話のなかからとくに火事のときに避難して飛んだという神さまのことのみをいおうと思う。

それについて、第一に言いたいことは、奥州地方に行なわれている秘事念仏宗の最大至尊仏である黒仏さま(1)であるが、この仏は従来地方の民間に偉大な感化と厳格なところの信条とを与えているかたわら、ときどき、ごく優しい童形になって現われてみたり、また御自分のお気に召さぬとかなたこなたに飛び移られたりなどしている。この秘事念仏が奥州にはいってきた時代は、中央部の総本家、渋谷地家の大先生の話だと、いまからちょうど百五十年前のことだという。今年は御先祖さまの菩提かたがた百五十年祭でもやろうかとのことであったから、年表を繰ってみると、安永元年か二年あたりのことらしい。