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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
その穴を突いて望みの大グマ三匹をえ、それから一つ山を越えてコダマのレッチウの小屋にいってみると、鉄砲諸道具をみなそのままにしておいて、肝腎の人間が一人もおりません。これはどうしたことだろうと思って、四辺を見ると、小屋の梁の上にいままで見慣れぬ毛色の小ネズミどもが七匹ちょろちょろと去ってゆく。それこそすなわち山の神さんにとがめられて、ネズミとなったコダマのレッチウの七人組のなれの果てであったのであります。それでいまでもけっして七人組のレッチウは忌んで、ないことになっております。
私は老人がたびたび用いるこのレッチウという言葉をまたそのままに用いましたが問い糺すとこれは「連中」ということだということがわかりました。またタカスというのは、山言葉の一で、深山で大木の梢が風雨のために折れたのが、自然と幹に朽ち込み大穴となったのにクマがはいったもののいわれです。このほか、ソラグチ(大木の根に穴があるもの)、ツルベ(これは岩穴でクマが釣桶のように上からはいってゆくようなもの)――まあざっとこんなふうになりますが、しかしこれは主題とは違った余談であります。いずれも秋田の荒瀬村に行なわれている山言葉です。