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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

ある晩のこと、村の若者ども多勢会合して四方山の話や、自慢話などをしていましたが、話のすえに息子は、おれはハギの大木を見たことがあると言い出しました。すると連座の若者たちが承知をせず、もしそれが偽りならそのぶんにしてはおかぬぞと息子をおどかしたあげく、それでは明日そのハギの大木を見にいこうという約束をして別れました。

話の余勢に、思わずあらぬ事を口滑らした息子は、家に帰ってからは、これはどうしたらよかろうと思いあまって、悔い嘆いたがいまはもう取返しがつきません。悶々として寝床にはいりますと、枕辺に怪しい人影がおりました。はっと思ってみると、それはさきに死んだ恋人のお萩であったから、懐かしさのあまり、とりすがろうと思うと、女はにっこり笑って、あなたはなにをそう嘆き悲しんでいる。今夜みんなと言争いをしたハギの大木のある所を私は教えてあげましょう。それはこういう場所にといったかと思うと娘の姿はふっと掻き消えてしまいました。

翌朝、息子は亡き娘からおそわった場所へいってみると、いかにもりっぱなハギの大木がある。そこでやっとのことで友人らとのかけ事にも勝つことができました。