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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
それに馴れていらっしゃるから、私のようにそういう便利なく生活するに馴れているものから見ると甘えるように、男でなくては、と云っていらっしゃる。だから二人ともいないときっとどんなにかお淋しいでしょう。娘二人いなくなったのとはちがってお淋しいでしょう。娘であって見れば力にしろ人間としての質量にしろ、母さんが優るとも劣りはなさらないのですから。
女だって、男の子を家庭で見るように大まかに見て育てればすこしはましになるのにね。女は女で、こせつくようにと女がするのだから可笑しい。着物や何か誰のために何のためにそうしなければならないのか一向意味が判らないのに、あれではいけない、これではいけない。うちなんかそういう点では普通よりいく分ましなのでしょうが、どうもびっくりする。他は推して知るべしです。
それでも今度は一ヵ月以上いたので、外出したと云えば野原徳山虹ヶ浜だけでお墓へちょいちょい位ですが、どこの家がどのお婆さんの家ということなどすこしは分って面白うございます。ここでは私もお客からやっと家の者らしくなり、台処へでも何でも勝手に歩きまわれるし、ものの在りどころもすこし見当がついたし塩の売りかたをも判ったし、雑巾がけもやるし、居心地よく楽になりました。