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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
きのう、小母さまは、朝のうちTさんが面会したら、もう午後からでもかえりたくて、あなたが昼間の汽車にしたらいいとおっしゃったというのを、夜でよろしうありますと、八時半のにおきめになりました。何しろ一昨日の朝迎えに行って、ひる頃そちらへ行って夜かえると、すっかりきめていらしたのですから、案外手間どって一昨日は夕刻かえれないのでしびれを切らしていらしたわけです。
八時半に立つというのに、おひるを少々おそうにしたら、はアお夕飯はいりまへん、という胸一杯の有様で、まるで夕方まで身のおきどころのない顔をしてムズムズしていらっしゃる。見ていられない。仕方がないから、では夕方まで映画でも御覧になりますかということになって、雨の中を帝劇へ三人で出かけました。光井のはチラチラするが、こっちのはようあります、というわけです。五時半ごろかえったら、あなたからの電報が来て居りました。
よんでおきかせしたら、余り迷惑そうな、むくれ顔をなすったので、私もすこし子供らしさにむっとして、「これは何も顕治さんが自分のために会いたがっているのではありませんですよ、小母さまがフラフラしていらっしゃるから、それでは将来が不安心だからと思ってなのだから、そんな迷惑そうなお顔をなさるのは妙よ。