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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

祥子は、必死になって相手をふり放そうと燕のように身を翻しながら、英夫の救いをもとめたが、だんだん追いつめられ、階段の下で自由をうしないかけていた。

英夫が応援に駈けつけようとした時、

「危い!」

祥子の叫びが聞えた。

よろよろと立ち上った趙が、ぎらりと右手に匕首を抜いて、血ばしった眼で起き上ったのだ!

その隙に、祥子も相手にむんずと右腕をつかまれていた。

「面倒だ、やってしまえ――」

趙が唸った。

それを聞くと、王も、右手と靴で、あらんかぎりの抵抗をつづけている祥子をひっ倒すと左手で胸の匕首を探った。

二人はもう絶体絶命だった。

「もうだめだ!」

英夫は、心の中で叫びながら、王の左手にとびかかって行った。

と、突然!

――だあーん!

耳をつんざくような銃声が聞えて、

「うおっ!」

どたり、と、肉塊の倒れる音がした。

それと一緒に、風のように、階段を飛びおりて来た宮崎運転士が、ものをもいわずに襟すじを掴んで王を引っ張り上げ、砂袋を放るように鉄板の上に叩きつけた。それからやっと、

「よく無事でいてくれましたね」

と、英夫をふりかえって、はじめてにっこり笑った。