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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

祥子が、囁いた。

「作ってからまだ間がないらしいよ、その証拠に、漆喰がまだ乾ききっていないところもあったもの」

二人はまた、階段をのぼった。

島を出る時から二人ともずっとはだしだったので、足音をたてずにしのび歩くのには都合がよかった。

こんどは、あまりにもの凄いものにぶっつかって、二人とも、きもを冷やした。――そこは機雷や、砲弾や、あらゆる武器が無数におかれている、軍需品倉庫だったのだ。

偶然に鍵を閉め忘れたのか、それとも、まだ、完全に出来上らないので、わざとそうしているのか、こうした危険な部屋にも、鍵をかけている形跡がなく、砲弾が廊下にまで無雑作におかれてあった。

二人の背丈よりも高い機雷のある部屋で、何気なくそれに触れて見ようとした英夫は、

「あっ!」

と、あわてて手を引っこめた。――右手に握りしめていた釘が、もぎ取られるように英夫の手をはなれ、貼りついたようにぺたんと機雷に吸い寄せられてしまったのだ。

部屋のなかを見まわしていた祥子も、おどろいてふりかえった。

「吸着機雷だよ、この表面に強い磁力があって、軍艦なんかには、こっちが吸いついて行って爆発するんだ」