Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

十

――御覧なさい。野末のほうから、豆つぶ程な人馬の影が一群れ見えて来たでしょう。あれが、日観師と、そのほかの人々に違いありません」

十

「――老師、迅いの」

「そちらが遅いのじゃ」

「馬より迅い」

「あたりまえ」

猫背の老僧日観だけ、駒の足をしり目にかけて、自分の足で歩いていた。

般若野の煙をあてに。

その日観と前後して、五人の騎馬の役人が、かつかつと野の石ころを蹴って行く。

近づくのを見て、此方では、

「老師、老師」

と、囁きあう。

坊主たちはずっと退がって、厳かな寺院の儀式の時のように、一列に並んで、その人と、騎馬役人とを迎えた。

「片づいたかい?」

日観が、そこへ来ての最初のことばだった。

「はっ、仰せのように」

と、胤舜は師礼を執っていう。

そして、騎馬役人へ向い、

「御検視、ご苦労です」

役人たちは、順々に、鞍つぼから飛び降り、

「なんの、ご苦労なのは、其許たちの方さ。どれ一応――」

と、彼方此方に横たわっている十幾つかの死骸を見て、一寸覚えを書き留める程度の事務を執って、

「取片づけは、役所からさせる。後の事、捨ておいて、退去してよろしい」

いい渡すと、役人らは馬上へ返って、ふたたび野末へ駈け去った。