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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
――それと関ヶ原牢人のくずれが入り込んで来たため、この奈良の町でも、新任の奉行などでは取締りようもない有様だというのである。
「ははあ、それで拙者のような旅人を、魔除けにお泊めなさるわけだな」
「男気がないものですから」
と、美人の後家が笑った、武蔵も苦笑がやまない。
「そんなわけですから、どうぞ幾日でも」
「心得た、拙者のいるうちは、安心なさるがよい。しかし連れの者が、追ッつけここへ捜して来ることになっている。門口へ、何か目印を出してもらいたいが」
「よろしゅうございます」
後家は魔除け札のように、
宮本様お泊
と紙きれに書いて外へ貼った。
その日も、城太郎は来なかった。すると次の日である。
「宮本先生に拝顔したい」
と三名づれの武芸者が入って来た。断ってもただ帰りそうもない風態だというので、ともかく上げて会ってみると、それは宝蔵院で武蔵が阿巌を仆した折に、溜りの中にいて見物していた者達で、
「やあ」
と、旧知のように馴々しく、彼を囲んで坐りこんだ。
三
「いやどうも、なんとも驚き入ったわけです」
坐るとすぐ、その三名は、誇張したもののいい方で、武蔵をおだて抜くのであった。