Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
磯部や松井田からかよって来る若い人々のそそり唄も聞えなくなった。秋になると桑畑には一面に虫が鳴く。こうして妙義の町は年毎に衰えてゆく。
谷川の音が俄かに高くなったので、話し声はここで一旦消されてしまいました。頂上の方からむせび落ちて来る水が岩や樹の根に堰かれて、狭い山路を横ぎって乱れて飛ぶので、草鞋を湿らさずに過ぎる訳には行きませんでした。案内者は小さい石の上をひょいひょいと飛び越えて行きます。わたしもおぼつかない足取りで其の後を追いましたが、草鞋はぬれていい加減に重くなりました。
水の音をうしろに聞きながら、案内者はまた話し出しました。維新前の妙義町は更に繁昌したものだそうで、普通の中仙道は松井田から坂本、軽井沢、沓掛の宿々を経て追分にかかるのが順路ですが、そのあいだには横川の番所があり、碓氷の関所があるので、旅人の或る者はそれらの面倒を避けて妙義の町から山伝いに信州の追分へ出る。つまり此の町が関の裏路になっていたのです。山ふところの夕暮れに歩み疲れた若い旅人が青黒い杉の木立のあいだから、妓楼の赤い格子を仰ぎ視た時には、沙漠でオアシスを見いだしたように、かれらは忙がわしくその軒下に駈け込んで、色の白い山の女に草鞋の紐を解かせたでしょう。