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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
五の五
五人の内、中年者の三人は大工、左官、足袋屋であった。金太は身についた職もないし、なにかの職を覚えたいとも云わなかった。栄二はなにも答えなかった。小島という人見張役は、口の中に唾の溜っているような、まだるこい調子で、諄くいろいろときいたが、栄二は初めから終りまで、ひと言も口をきかなかった。
「おまえは自分の名も云わないらしいな」小島は持っている帳面を見ながら眉をしかめた、「ここへ来たらすなおにしないと、痛いめにあうぞ」
そして金太とおまえは「もっこ部屋だ」と云った。――それは川渫いや土方しかできない者たちの集りだという。どうにでもなれ、なんとでもしやあがれ、どいつもこいつもおれにはかたき同然だ、と栄二は思っていた。
五の五
もっこ部屋には人足が二十三人いた。金太と栄二が加わったから二十五人になったわけで、伝七、倉太、才次という三人が小頭であった。伝七は五十五、六、倉太は四十七、八、才次は二十八、九だろう、三人とも本職の土方あがりであり、ともに伝馬町の大牢にいた、ということを誇りにしているようであった。
小頭たちは栄二のことをぶしゅうと呼んだ。武州の産という意だろう。