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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
二
「加護あれ。神仏」
と、かねて彼を狙っていた例の食客浪人は、箭に毒をぬり、槍の穂を石でみがいて、孫策の通りそうな藪かげにかくれ、一心天を念じていたのであった。
二
孫策の馬は、稀世の名馬で「五花馬」という名があった。多くの家臣をすてて、彼方此方、平地を飛ぶように馳駆していた。
彼の弓は、一頭の鹿を見事に射とめた。
「射たぞ、誰か、獲物を拾え」
振向いた時である。孫策の顔へ、ひゅっと、一本の箭が立った。
「あっ」
顔を抑えると、藪のかげから躍りだした浪人三名が、
「恩人許貢の仇、思い知ったか」と、槍をつけてきた。
孫策は、弓をあげて、一名の浪人者を打った。しかし、また一方から突いてきた槍に太股をふかく突かれた。五花馬の背からころげ落ちながらも、孫策はあいての槍を奪っていた。その槍で自分を突いた相手を即座に殺したが、同時に、
「うぬっ」と、うしろから、二名の浪人もまた所きらわず、彼の五体を突いていた。
うう――むッと、大きなうめきを発して、孫策が仆れたとき、残る二名の浪人もまた、急を見て馳けつけてきた呉将程普のために、ずたずたに斬り殺されていた。その附近は、おびただしい血しおで足の踏み場もないほどだった。