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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

恋人お京

「これ若造」と例の声、「感心だな、抜きおらぬな。逃げるつもりか、それもよかろう。ふ、ふ、ふ、逃げられめえ」

右へ右へと廻りこむ。

「殺されてしまえ、きっと殺す。……なぜのぞいた、馬鹿な奴だ、見さえしなければよかったのだ。見られた以上は助けられない。コレ前へ出ろ、切りこんで来い。……来ないか、行くぞ。ソレ、ソレ、ソレ」

構えをつけながらしゃべりまくる。場数を踏んだ証拠である。一つの立ち木から他の立ち木、移ろうとして広太郎、一瞬間全身を現わした時、肩に白髪の泡を立て、「どうだ!」と一躍切りこんで来た。と、鏘然たる太刀の音、はじめて広太郎抜き合わせ、危く鍔際で受けたらしい。

さっと左右へ飛び違う。

「えらいの、若造」

「何を! だまれ」ブルッと一つ武者振るい、タラタラと流れるあぶら汗、額から両眼へ入ろうとする。

「御用! 御用!」と遠のく声。とり物も終りに近づいたらしい。火事は盛んだ。紅色の火光、ここらあたりまでポッと明るい。相青眼の二本のつるぎ、その中でキラキラと輝いている。

恋人お京

二合目の太刀、また鏘然、音を立てて火花が散り、鍔ぜり合いになったとたん、「しまった」